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2011年10月 9日 (日)

襲名興行のような當世流小栗判官

Dscf2952_w このところの私的なビックニュースは、市川亀治朗丈の4代目市川猿之助襲名です。

当代の猿之助丈が病に倒れ舞台に立てなくなってから、せっかく復活させた通し狂言も華を失って久しい。私は、お芝居は通しで見るもの、と決めているので、自然に歌舞伎公演から足が遠ざかっておりました。

また、市川猿之助が舞台に立ち、次から次えと通し狂言を上演するのでしょうか、ちょっとわくわくして来ます。

歌舞伎が昔の通し狂言から現代の見取りが主流になった事には理由があります。通し狂言には面白い場面とそうでない部分があり、高い観劇料を払う観客は面白い場面ばかり集めたダイジェストを要求するようようになったからです。

長い通し狂言を、観客を飽きさせることなく上演することは、情報社会で目が肥えた現代の観客を相手にすると、とても難しいことだと思われます。

今回、襲名に先立って上演されているのは、近松門左衛門作、當世流小栗判官。襲名の発表があったことが関係しているかどうか解りませんが、猿之助がいる、そんな感じさえしました。

この芝居は本当によく出来ている。見せ場も1幕目は、乗馬の曲乗り、2幕目は、大道具を使った鮮やかな立ち回り、3幕目は天馬を使った宙乗り。と上手く配置されております。

季節も、1幕目は、桜が満開の鶴が丘八幡宮、2幕目は、夏の近江の琵琶湖、3幕目が紅葉が見事な美濃から雪の熊野、そして常陸と季節と場所の変化が舞台を美しくしております。舞台は何時も新鮮で観客はまったく飽きません。

この芝居はいわゆる小栗判官モノですが、個人的にこの芝居のストーリー、登場人物の立ち位地が、いわゆる小栗判官伝説と比べてスッキリしていて好きです。

芝居の小栗判官は、幕府方のエリート武士。照手は善人の横山郡司の娘でお姫様。国崩しの大悪は照手姫の叔父、横山大膳。小栗判官の脚萎えは、婚約破棄の上母親に殺された小栗判官の許婚お駒の怨念。

これは、小栗判官は性格が破綻した変人、照手は遊女あるいは悪人の横山大膳の娘、小栗判官は毒殺されたものの地獄から生き返り脚萎えになった、とする、芝居の元になった小栗判官伝説より自然にさえ思えます。

また、芝居の裏スジである漁師浪七の話も、鬼瓦の胴八、矢橋の橋蔵など登場人物が鮮やかで印象的。

私はこのお芝居を随分見た気になっておりましたが、実際に見たのは平成5年と平成9年の公演だけ。もっとも公演中は何度も通いましたが。

特に平成5年の公演では故宗十郎丈が、滑稽な矢橋の橋蔵と、重厚なお槇の二役を見事に演じて未だに鮮明に記憶しております。

この次は矢橋の橋蔵を市川中車で見ることができるかも知れませんね。鬼瓦の胴八はちょっと難しいでしょうけど。

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