私の父は、写真を撮られるのが嫌いなのだ、と私は思いこんでいて、正面から彼の写真を撮る事はありませんでした。
しかし、父母が一緒に居る時の姿は好きだったので、よく望遠レンズで盗み撮りをしていました。ちょっと考えて見れば、息子が実の父母の写真を撮るのに、望遠レンズで盗み撮りをする必要など無いのですから、ちゃんと声をかけて撮れば良かったのです。
ただ、老夫婦の写真を撮ると、コイツ、遺影のつもりで撮っているな、と思われるのも嫌だったし、また、コトダマのようになるのも異やだったので、あえて、ちゃんと撮らないようにしていた観はあります。
とはいえ、遺影にも使えるような写真も撮っておかなければと言う思いがつのり、一年ほど前、この写真を撮った後か前に、ハッセルブラッドにプレストを入れて、家の中で正面から写真を撮らせてもらいました。
先日、その父が亡くなり、遺影にする写真を探したところ、案の定ちゃんとした写真が無く、結局この時撮った写真を使う事になりました。
ウチの場合、亡くなった年齢にかかわらず、ジイサンの遺影は彼が10代の時の写真、バアチャンの遺影は彼女が40代か50代のものを使っておりますので、父の遺影は誰よりも年寄りくさい事になり、母ははじめ不満そうでしたが、もう少し良いものを見つけたらそれに変えることにして、とりあえず納得してもらいました。
しかし、葬儀を終えて、参列者に写真をほめてもらうと、だんだん納得してきたようです。
写真的には、写真屋さんが白黒フィルムをスキャンして、顔だけを切り抜いてスーツ姿の台紙に合成してプリントアウトした物なので、私としても不満があります。よくもこんなに不自然に仕上げたものだと思うデキなのです。
それでもご近所さんからお褒めの言葉を頂戴した理由は、目線の柔らかさと顔の自然さ。彼の目は、室内で椅子に座ってリラックスしながら、カメラを構えた息子を見ている訳ですから、集合写真の切りヌキの写真とはまるで別物で自然なのです。
今では、ほとんどの人がデジカメを使って簡単に写真が撮れるし、写真屋さんの方でも、出来ればデジタルデータで写真が欲しいようなので、身近な人が、デジカメで遺影を撮る時代が来るかもしれませんね。
私としては、銀塩で手焼きしたオリジナルの写真を、今回使った写真と摩り替えたい気持ちでいっぱいなのですが.......スーツ姿じゃ無いから、怒られるかなぁ。
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