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2008年10月18日 (土)

もう一度見たい黒塚

Img_0627_w Camera : Canon EOS 5D, Lens : Distagon 21mm F2.8

ススキの丘を見れば、そこに松の木を探すくせがあります。そしてススキと松が最も美しく配置されている風景を探しもとめております。

ススキ野原では富士の裾野が圧倒的なスケールで美しいのですが、私は出来れば、この風景を東北で求めたいと思っております。

私のこの欲求はおそらく「黒塚」によるものだと思います。「黒塚」とは福島県二本松市にある鬼婆の墓のことであり、またそれにまつわる伝説のことでもあるのですが、この伝説に基づいて、能や歌舞伎の作品があり、私の場合、黒塚は歌舞伎の演目をさします。

歌舞伎の黒塚は、鬼婆がかの地で鬼婆になった理由が違うほか、本来の話ではト書きに過ぎないような部分が白眉の見せ場になっております。それは、旅の僧をもてなす為に裏山に焚き木を取りに行く老女岩手実は鬼婆が、悪行を悔いて仏の法力に縋れば来世は救われるとの阿闍梨祐慶の言葉に永年の心のわだかまりを消し、月影に戯れ舞い場面です。

背景は一面のススキ、松、そして照明が作る三日月(ここでは真如の月と呼ばれます)。この背景は視覚的に美しい歌舞伎の舞台の中でも最も美しいもののうちの一つです。この美しい背景を背に老女は長年の怨念を忘れるように踊り、第三場での絶望を知らず、ひたすら救われる事への期待と喜びにあふれます。

この部分の踊りには日本舞踊の平面的な動きに加えてロシアバレエから取り入れた立体的な動作が加わっていたり、照明が使われ、照明が作る影が演出に加わっていたり、幾分近代的でありますが、ここでは非常に効果的で美しさを引き立たせております。

余談になりますが、私は第三場で、絶望のあまり鬼婆と化した老女岩手の人喰鬼の口元にスポットライトを当てる事意外は、この演目に照明効果は欠かせないものと思っております。

歌舞伎の演目はどう説明してもムダで、百聞は一見にしかずの面があります。しかし、この演目は、残念ながら、最近はかかることが無くなりました。そのせいか、ススキ野原を見るたびに、月夜の景色を想像し、黒塚をまた見たいなぁと思うのです。

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コメント

歌舞伎に造詣が深い貴殿が羨ましい...
きっと食わず嫌いなのでしょうが、ワタシみたいなものには
敷居の高いものとなっています。
ススキと松..色的には静かな色ですね。

投稿: SCR | 2008年10月18日 (土) 22時14分

ススキの原っぱ 大好きです。

投稿: 會津 | 2008年10月18日 (土) 22時32分

SCRさま今晩は
歌舞伎には色物の華やかさがあって、大好きです。
歌舞伎はもともとカブク(社会から外れる)の世界があって、当時の最先端なのです。

會津さま
このあたりではフジの裾野のススキが綺麗です。月夜のススキはさぞ綺麗だろうな、と思っておりましたが、意外と光が弱くて綺麗に輝きませんでした。

投稿: kk | 2008年10月18日 (土) 23時45分

毎年、秋は白黒屋には頭を悩ます季節ですが、銀杏はまあまあ、しかし、このススキは素晴らしい題材になるんですよね。光や風のそよぎが感じられるというとてもいい、風景ですね。

京都の秋の紅葉は、冷たい雨でも降ろうものなら、とても情緒的にな漊と思うのですよ。しかし、わたしは自分の写真は諦めて、その色合いを心に納めておしまいです。

投稿: ラ・ペルラ | 2008年10月19日 (日) 23時18分

ラ・ペルラ さま
私は夜のススキが何とかして撮れないかそればっかり考えておりました。
そして、私の場合ススキはカラーの題材です。何となくですけど。

投稿: kk | 2008年10月20日 (月) 00時22分

こんにちは
 
はじめまして、匠と申します。演劇公演のことですが、私も情報を一つご提供いたします。よろしくお願いします。

米国神韻芸術団は2010年3月に4度目来日公演、詳細はホームページをご参考ください。
http://www.ticket-online.jp/home/

2010年日本公演スケジュールはこちら
http://www.ticket-online.jp/home/index.php?main_page=page&id=3

有名人から2009年日本公演への評価:
http://www.epochtimes.jp/jp/spcl_shenyun_1.html

作詞家・東海林良氏(日本音楽著作権協会会員)の絶賛
世界的チェロ奏者で作曲家でもある平井丈一朗氏の称賛
演技派俳優・村田雄浩氏の評価
日本映画ビジュアルエフェクト(VFX)クリエーターの第一人者・柳川瀬雅英氏の評価
人間国宝の善竹十郎氏の評価
デヴィ夫人の評価
等など

投稿: TAKUMI | 2010年2月 9日 (火) 22時24分

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