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2007年4月17日 (火)

香さへなつかし山吹の花

Eishoji_w Camera : Bessa II, lens : Color Heliar 105mm F3.5, Film :RVPF

山吹の花は思い描いた通りの香りがします。どんな香りかと言うと、柔らかく、穏やかで、控えめな甘さの香りです。それでも山吹が群生する小道はとてもよい香りに包まれます。

山吹の花は日本由来の花なので、昔から和歌にもいろいろ歌われておりますが、香りについて歌われているものを検索すると古今集の「春雨ににほへる色もあかなくに香さへなつかし山吹の花」が出てきます。

この歌には、「にほへる色」、「香さへなつかし」と香りに関する言葉が二つ出てきますが、「にほへる」の方は色にかかることからも解るように視覚的な鮮やかさを意味しています。「香りさえなつかし」は、香りも好感がもて、いとおしいという意味です。でも、この歌の主題は鮮やかな山吹の花の姿にあり、それをあらわす事に「にほい」が使われたので、「香り」が添え物になった感があります。良い香りを持ちながらそれを主張しない、山吹に花の姿そのままの歌ですね。

また、山吹の歌で有名なのは、何といっても「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞあやしき」という歌ですが、太田道灌の逸話がこれを有名にしています。何でも、鷹狩に出かけた太田道灌が雨具を借りようと、山吹の里のあばら家を訪ねたものの、出てきた娘さんに山吹の枝を差し出され、怒って帰ったところ、これは有名な歌にかけて、貸し出す雨具(蓑)がなくてすみませんという意味であることを諭され、自分の無学を恥、発奮して勉強し、歌人としても秀でた者となった、とのこと。

話としては、つっこみどころが満載の話で、当時の日本の教育水準って、村の娘っ子が後拾遺集の兼明親王の歌を知っていて、ここぞ!とばかりに使いこなせるレベルだったのか。村の娘っ子が、勇猛な武将を相手に、本気で機知たっぷりに応対したのか。等々。

ここからは、私の妄想。娘さんは、落ち目ではあるものの名のある家のご令嬢。血気盛んな道灌さんは、鷹狩にかこつけて、娘さんをナンパしに出かけました。居りよく雨になったので、それを口実にしけこもうと思ったものの、娘さんからは山吹の枝を差し出され、ハタと困った。機知にとんだ返答の仕様が無い。泣く泣く帰って、女心をつかむには、あんな時こそ気の利いた歌の一つもひねって、答えなくちゃいけない。よーし頑張るぞー。こっちのほうが真実味があると思いません?

Img_7423_w 風で飛ばされたのか睡蓮鉢の水面に山吹の花が落ちていました(eos 5D,EF24-105)

この山吹の里を自認する場所は幾つかありますが、今回紹介する山吹の写真は鎌倉の英勝寺のものです。ここは太田道灌の屋敷跡であり。太田道灌の孫娘で、徳川家康の側に使えたお勝の局が出家して英勝院となり開いたお寺です。いくつかある山吹の里よりも、より太田道灌に近いと思われます。ただ、山吹の香りを楽しむのであれば、関東近郊なら、浜離宮をお勧めします。あそこの山吹は何故か香りが強いのです。

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