アンナ パブロワは孤高のプリマドンナのようなバラ
Camera : Canon5D, Lens : Planar 55mm F1.2 MMG
伝説の名優六代目尾上菊五郎さんが、バレエ公演の瀕死の白鳥を見て感動し、バレリーナに「息を詰めて幕切れを迎えているように思えるが、もし幕が閉まらなかったら?」と聞いたところ「私は死ぬことになります」とそのバレリーナは答えたとか。六代目も、そうなったら本当にこの人は死ぬだろうなと思ったとか。この伝説のバレリーナがアンナ パブロワ(Anna Pavlova)さんです。
この高名なバレリーナと同じ名前を持つバラが表題の写真のアンナ パブロワです。著名な育成家のPeter Bealesさんが作出したものの花つきが悪いので試験床に植えっぱなしだったところを、友人で当時アンナ パブロワの伝記を執筆中だったKeith Moneyさんに見初められ、アンナ パブロワと名づけて世に出すよう説得され、この名前が付いたとのことです。
画家であり写真家でもあるKeithさんにとって、このバラのどんなところが、アンナ パブロワのイメージだったのか興味があります。が、自らカタログに書いたコピーを原文のまま引用すると次の通りです。
There is a real period charm about the full, slightly frilled petals with their shades of face-powder-pink, all set off with the darkest possible leaves, strongly circular.
it is quite haunting: the nearest I can get to describing it would be to imaging a picnic of fresh fruit salad with Turkish delight and served under a flowering May tree.
左の写真のように、初夏の可憐で美しい開花の様子が、イメージとして重なったものと想像されます。(Pentax645,Distagon50mmF2.8,RAPF)
ところが私は個人的に、勝手ながらも、このバラが初冬に寒さに耐えながら、最後の花を咲かせる様子に孤高のバレリーナの名前を重ねてしまいます。初冬の斜光をスポットライトにして、凛として咲く花の姿には感銘を受けます。この姿を見たいがために、手入れを怠って放置しているというのは言い訳に過ぎないとしても、このバラはこの姿を見せてくれるだけでもう十分すぎるくらい価値があります。それに、この一輪だけで庭中にバラの香りが漂います。
アンナ パブロワは素晴らしい香りの銘花でもあるのですが、特に初冬の冷たい空気に漂う香りは、凛々しく、肝がすわった、孤高な感じがするものです。夏の花ならば、爽やかに発散するタイプのモダンなダマスク香で、フリルがついたような可愛い花とよくお似合いな香りと表現するのが正しいでしょう。
英国のBeales社のホームページでは香りを紹介するのではなく、アンケートになっており、あなたはこの香りをどう感じましたかという問い合わせに選択肢から答える形です。残念ながら「凛々しく、肝が据わった、孤高な感じ」なんて言う選択肢は無く、中で一番近いと思われるDeep and Heavyを選択してみたら、これが一番メジャーな答えでした。
| 固定リンク
コメント