夜顔は美しさゆえに夕顔にされそう
Camera : Canon 5D, Lens : EF100-400mmF4.5-5.6L
日本では、ラッパ型の花が咲く花をとりあえず顔に例えてみる事が好きなようで、このような花が、朝咲けば朝顔、昼咲けば昼顔、夕方から咲けば夕顔と呼んで来ました。
ヨルガオが明治の初めに日本に入って来た時は、どんな感じだったのでしょうか。夕方から咲くのですが、もう夕顔は埋まってます、じゃあ夜顔でどうだ、みたいな議論があったのでしょうか。とりあえず、和名は夜顔に決まりました。
ところが、この花は夕顔と呼ばれることが実際には多いのです。思うに、既存の夕顔よりも、より夕顔らしかったからではないでしょうか。
私が思い浮かべる夕顔は、まず源氏物語の夕顔。この名前は夕方から、蔓の合間から白く美しい花が咲き、朝にはしぼむ一夜花を創作の動機にしています。源氏物語の夕顔は、奥ゆかしく謙虚な性格にもかかわらず、嫉妬から呪い殺されるというはかなさも加わります。夜顔の花がまさしくイメージです。
これに対して実際の夕顔は、ヘチマやらカンピョウの実を成らせる農作物の花のイメージが先行します。確かに夜顔を知らない昔は、夕方から咲き始める顔型の一夜花として、はかない美しさの象徴に夕顔をあてるしかなかったでしょう。清少納言は「夕顔の花は綺麗だけど実はちょっと不細工ねー」みたいな事を書き残していて、このはかない一夜花は、花こそ一夜でしぼむものの、大きいヘチマやらカンピョウの実を育て上げる丈夫で健勝な植物であることを認めております。源氏物語の夕顔のはかなさは本来似合わないかも知れません。
だから、夜顔を鑑賞できる現代では、昔々、夕顔のイメージで作られた創作を、よりイメージの実現に近い夜顔に置き換えてしまうのは無理も無い事だと思います。
夜顔は晩春から初夏にかけてポット苗で売られます。それを育てて、初秋から晩秋にかけて、花を楽しむのですが、この花はドリルのような蕾も魅力的です。
夜に咲く一夜花といっても、まだ日のある夕方には咲くので、明るい時に花を観賞できます。花の香りも開花してからしばらくは、ほのかに上品で甘い香りが漂いますが、やがて弱まって行きます。夕方が最も鑑賞に適しているように思えます、その意味でも夕顔的な花なのです。
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