Pinkham "Bi-Quality" reproduction of Pinkham & Smith "Visual Quality"
Camera : Speed Graphic 45, Lens : Pinkham Bi-Quality 14inch F4.5, Film : EPN, F5.6, 1/40
この作例は、Pinkham Bi-Quality 14Inchをスピグラで試写した時のものです。本来なら8x10で撮ったものが良いのでしょうが、私は8x10のカメラを持っていないので45でがまんしてください。もともと、作例など皆無に等しく、ましてカラーポジの物など期待するだけ無駄な状況なので、少しは貢献になるでしょう。それでも、原版ポジはもっと素晴らしい写りを見せていて、現像所で上がりを見た時は近年無い感動を覚えました。
このレンズは正確に何時、何本くらい制作されたか不明なのですが、信頼できそうな話はアメリカの写真家のLaytonさんと思われる方からの投稿で、非常に貴重な資料がhttps://www.usask.ca/lists/alt-photo-process/2005/jan05/0490.htm
にあります。これをネタにして少し説明すると以下の通り。
Frank Peckmanという写真家は古い(1950年当時で!)Pinkham & Smith のレンズのファンでしたが、入手が困難なことから、Pinkham & Smith の創業者の一人の息子を説得して、最も需要のありそうな14インチのシリーズ4、Visual Qualityを1950年代に限定復刻生産して販売するようにしました。
その数がどのくらいだったのか不明ですがいずれにしても希少であったことは間違いありません。そして、実際の制作に携わった者も誰かははっきりしていないのですが、全て手作業の研磨で作成したオリジナルに比べ、手研磨っぽく見えないことと、絞りのリングがコダックのポートレートレンズについているものと似ていることは確かなようです。
このレンズは、スタジオの8X10のカメラに据え付ける用途で、サイズを選ばれて限定復刻されたとのことですが、1920年のPinkham & Smithのカタログを見ると、Visual Quality
は9インチ、12インチ、14インチ、16インチの4焦点距離がラインアップされていて、それぞれ4x5、5x7、6.5x8.5、8x10をカバーするとされていました。しかしこの数値は無限でシフトを保証する数値でしょうから、実際の使用目的でこのレンズを使用する場合、14インチのレンズが8x10を楽勝でカバーするのでしょう。
ところで、この有名だけれども忘れられたレンズの名前が脚光を浴びたのは、2002年にCookeがPS945というレンズを作成してからでしょう。PSはPinkham & Smith、9は9インチのこと、45はf4.5の明るさから来ています。
つまり、このレンズは9インチのPinkham & Smith "Visual Quality"の復刻版なのです。最新の復刻が9インチで行われたことは、時代の流れでしょうか。ただ確かに14インチで出すよりは売れそうです。と言っても数を売るレンズでは無いでしょうけど。
このCookeの復刻で、Pinkham & Smith の名前が出回り、Pinkham Bi-Quality も再び世に出る機会が出てきたということでしょうか。そして、運の悪い一本が、極東のおじさんに振り回されることになってしまったのでした。
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