クズ、米国本土を侵攻中
camera : Pentax645 lens : SMC Pentax 300mm F4 ED for 6x7, Film : RVPF
アメリカの南部では、夜は窓をしっかり閉めて寝るそうです。クズの侵入を防ぐ為にね。また、識者は嘆きます。植物の原産地にはその植物の天敵も同時に居て生態系のバランスが保たれている。天敵をつれずに植物だけ導入するからこういうことになる。と。
クズはアメリカには歴史的に有名なニューディール政策の頃、土壌保全のため導入されましたが、地域によって日本製の工業製品など足元にも及ばないくらい、大地を席巻しております。窓の戸締りを厳重にして侵入を防ぐくらいに。
そこで、原産地の日本で、いったいクズの最大の天敵は何だ?と考える訳ですが、私が思うにクズの最大の敵は人間であったのではないかと思うのです。
古来、日本ではクズをいろいろなものに利用してきました。そもそもクズという名前自体が名産地の奈良県吉野の国栖(くず)に住む人々が、食用にしたり、薬用にしたり、織物を作ったりと利用していたことからつけられた名前なのです。
そんなことなら、アメリカでもクズの繊維で民芸品を作り、くずきりや、くずもちを食べ、風邪ぎみな時は葛根湯を飲んで早く休めば良いのです。とはいえ、日本でも名産地以外では、ほとんど利用されていませんね。里山に行けばクズは立ち木を覆うように伸び放題です。
このクズは秋の七草の一つで、マメ科の花にありがちな形の赤紫色の花を、花穂の下から開花させ、甘く重い香りを放ちます。蔓性の植物なので、通常は高いところに花をつけ、花も蔓の大きさにくらべると少ないです。これでは、花が咲いても、クズの侵食に嫌気が来ている人には十分な慰めにならないでしょう。
この花がもう少し可憐で、花つきが良く、甘さも控えめで、暑苦しい夜を慰める爽やかな香りであれば人々も閉ざした窓を開け放してくれることでしょう。残念ですが、あまり鑑賞には向いていません。
ただ、この植物の名誉の為に一言つけ加えると、この植物は人類にとって最も有益な植物の一つで、人類にいろいろと貢献してくれた事を疑うことはできません。
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