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2006年4月19日 (水)

香りの無いことを売る椿の良い香り

Tsubaki2_w カメラ:Hasselblad 2000FCW レンズ:Variogon 140-280mm フィルム:E100VS

椿は香りが無いことを「売り」にしている花です。たとえ椿にはそのつもりではなかったにしても。「ひかえめな美点」と言う花言葉も、小説「椿姫」も椿に香りが無いことを、モチーフにしています。

Img_6120_w カメラ:Canon5D, レンズ:Apo Macro Elmarit100mm

椿は、小鳥を受粉の協力者として頼って花を咲かせるので、花のつくりも小鳥用に厚い花弁と、長いおしべを持った形をしています。鳥が見つけやすいように、赤い花を横向きにさかせますが、嗅覚が弱い鳥のために、香りは要らなかったので、香りは無いと説明されています。

では、実際に椿に香りはないかというと、あります。香りが強い椿を交配した園芸種はもちろん、どこにでもある薮椿にしても、うっすらと香りはあります。

子供の頃、小学校からの道草によく、椿の花を拾っては川に流して、友達とレースをして遊びました。拾った花で足りなくなると、咲いている花までむしったものでした、その時の香りを記憶しています。

椿の花が水に流れるという状況は、黒澤明監督の映画椿三十朗で、塀の下を流れる小川に赤か白の椿を流して、討ち入りの合図にする、というシーンが印象に残りますが大人でも、椿の花を川に流してみたいと思うのですね。

記憶しているといっても、記憶にある香りはとても曖昧でした、少年の日の記憶という甘い条件で美化もされています。けれども、先日ふと、薮椿の香りをかいで見たら、一瞬で眼前に懐かしい情景がよみがえりました。本能に近い嗅覚のなせる業です。この香りで間違いありません。

強くはありませんが、上品で、やさしく、バランスの良い香り。何か、「食べれるかも」と思わせ、安心感をいだかせる香りです。

ひょっとして椿姫のマルグリッドが赤い椿を持つ日は、その椿が持つ淡く上品な香りを楽しむ為だったのかも知れません。

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