沈丁花の香り
生まれも育ちも北国の私が、就職の為東京に出てきたとき何に驚いたかというと、雪が無いばかりか、街になにやら良い香りが漂っていることでした。
これが、東京の春なのかと思いながら、指定された寮の部屋に入り、先に届いた2箱のダンボール箱を見た時、なんとも言えず寂しい気分になったものでした。
その後、あの香りの正体は沈丁花であることを知り、暖かいところでは、良く植栽されている常緑の庭木で、春先に花名の由来になった、沈香と丁子が混じったような香りの小花をボール状に咲かせることも調べました。あの香りについて、興奮して同僚に語ったところ、あっさり沈丁花じゃないか?と言うわれて、少し悔しい思いをした為です。
沈香と丁子を混ぜたというのは、良い香りの例えであって、実際の香りとは違います。また、香りは強力で、うららかな日差しの下で沈丁花に取り囲まれると頭がくらくらするほどです。
そのせいか、私はこの香りは直接嗅ぐのではなく、空気に拡散されて、流れてくる香りが好きです。それも夜に。
そうやって、夜半に流れてきた香りに触れると、やはり、あの時の別れの寂しさとか、旅立ちの緊張感が、今でも思い浮かんできます。
それは私だけの事なのでしょうか、それとも3月に沈丁花が咲く地域の人が、3月にあった出来事を思い出す、共通の触媒になっているのでしょうか。
上の写真、カメラ:Canon5D レンズ:EF 24-105mm
下の写真、カメラ:Rolleiflex SL66SE レンズ:Kinoptik 100mmF2 フイルム:RVP
沈丁花の写真は、難しいです。アップだと、結構花が傷んでいたり、砂埃が入り込んでいたりしていることを、後で気が付くことが多いのです。いっそうのこと、スナップの背景のほうがしっくりくるような気がします。
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